鹿児島県内でとれた新鮮なエビやカマス、キビナゴ。並べられているのは、住宅街に停められた軽トラックの車内です。
西村ミドリさん(75)。40年前から鹿児島市で魚の移動販売をしています。その日水揚げされた地元の魚が安く買えると人気です。
買い物客
「キビナゴがおいしいので、今夜お刺身にしていただきます。この方のお魚しか買わないので、いつも頼りにしている」
西村ミドリさん
「お客さんが喜んでくれるのはすごくこっちもうれしいよね。」
おなじみの音楽で各地域を回る、走る魚屋さん。
魚の移動販売業者でつくる組合によりますと、昭和50年代に県内で200台ほど走っていた販売車は、現在は25台ほどまで減少。今ではあまり見かけない存在になりました。
一方、国の試算によりますと、自宅から最寄りの店まで500メートル以上あり、車を持っていない65歳以上の割合が、鹿児島県は2040年には全国2位の20%に上るとみられていて、買い物弱者への支援が課題となっています。
午前4時、中央卸売市場から1日が始まります。
西村ミドリさん
「エビゲット。鹿児島のタカエビ。お刺し身(で食べるの)が美味しいのよね」
夫の健次郎さん(83)です。いまは移動販売はみどりさんに任せ、仕入れなどで支えます。
西村健次郎さん
「家内が頑張っているから、それについていく。(ミドリさんは)お客さんに好かれている。それが一番生きがい」
この日は、旬のアジをはじめ、タイやカンパチなどおよそ50種類を仕入れました。
週に4日、鹿児島市内を中心に20カ所を回ります。相手に合わせた調理法を織り交ぜながら、おすすめを紹介します。
買い物客
「ちょっと小麦粉をつけてバターで焼くだけでおいしいよとか、いつも聞いてます、簡単な方法を。」
西村ミドリさん
「あの時の魚おいしかったとか、あの料理は本当においしかったとか言ってくれるとこっちもうれしい。」「新鮮な魚を売って、みんなが元気が出たよっていうのが一番うれしいよね。体が続く限り、(もう)80歳になるから、それくらいは頑張ろうか。みんな待ってるからね。」
走る魚屋さんがつなぐ、地域の輪。今日も明るい音楽とともに、魚と笑顔を届けます。