鹿児島県の離島、奄美大島。
多様な生物が生息・生育していることが評価され、去年、世界自然遺産に登録されました。
透明度の高い海も、訪れる観光客を魅了しています。
海中には、およそ400種類のサンゴが。魚たちの住処になったり、自然の防波堤になったり…。豊かな海を育む欠かせない資源になっています。
こうした海を守っていきたいと、活動を続ける若者たちがいます。
大島高校3年の重信瑚杜子(しげのぶ・ことこ)さん、肥後咲朋里(ひご・さほり)さん、そして安田菜音(やすだ・なお)さん。
彼女たちがいま注目しているのは…。
(重信さん)
「日焼け止めに含まれる成分が、サンゴに及ぼす影響について調べています。」
紫外線から体を守ってくれる日焼け止め。
しかし水中に溶け出すと、一部成分がサンゴの褐虫藻(かっちゅうそう)を損傷させ、白化現象を促進させるという研究結果が報告されています。
サンゴを観光資源としている国や地域では、有害とされる成分を含む日焼け止めを規制するなど、動きを見せているこの問題。
(肥後さん)
「(奄美大島も)世界自然遺産に登録されて、観光客が増加すると思うので、日焼け止めの影響を少しでも減らせたらいいなと思って研究を始めました。」
授業の「探究の時間」を使って研究をはじめた3人。
まず行ったのは…
(重信さん)
「日焼け止めの成分がサンゴの白化を促していることを、どのくらいの人が知っているのかな、と思って」
同級生200人に聞き取り調査を実施。およそ8割の生徒がこの問題を知りませんでした。
また、ドラックストアやコンビニなどでサンゴにやさしい日焼け止めがどれだけ売れられているかも調査。
結果は、378個中8個でした。
(重信さん)
「8割の生徒が、サンゴにやさしい日焼け止めがあることを知らないということがわかったので、店頭調査をしてその現状があるのも仕方がないと思った。」
自分たちで実験も行いました。
害があると言われる成分が入った日焼け止めを水槽に溶かし、サンゴの変化を観察。実際に白化することを確認しました。
(重信さん)
「海岸で白化して転がっているサンゴは見ていたが、自分たちで飼育したサンゴがだんだん白くなっていく様子を見るのはショックでした。」
彼女たちの研究を見た専門家は…
(奄美海洋生物研究会 興克樹会長)
「ドラックストアやコンビニにも足を運んで、どういう商品が売られているのかまで調べ上げられているのがすごい。
(今後)日焼け止めによる白化現象が起こる可能性も高いので、今のうちからサンゴにやさしい日焼け止めにシフトしていくのは大事。
そういうことを発信してくれているのは良い取り組み。」
今、彼女たちの活動は徐々に広がりをみせています。
地元の化粧品会社が、この問題の周知活動に協力してくれたのです。
(株式会社アーダン 担当者)
「環境もやさしい成分にこだわった、シルク主原料の化粧品を製造・販売しておりまして、近い取り組みをしているので、興味を持ってお声がけをしました。」
(重信さん)
「ポスターを作って、どういう成分がサンゴに害があるのかを分かりやすく示しました。」
こちらは、彼女たちが作った啓発ポスター。
化粧品会社が取引している店舗に設置してもらいました。
(株式会社アーダン 担当者)
「お客さまからの反応はまだ返ってきていないのが正直なところ。ただ、お店の方の興味関心は深まっている」
2年半にわたって行われた、彼女たちの研究。
(重信さん)
「周りの人の環境への意識を変えられていると実感していてうれしいです。」
(肥後さん)
「観光客が増えていく中でも、奄美のサンゴを守っていけたらと思います。」