漁に使う網でできたロングコートに、ペットボトルが装飾されたドレス。鮮やかな色合いが目を引くワンピースは、歯ブラシやライター、ストロー、フォークなどが幾重にもなっています。
いちき串木野市から日置市、南さつま市までのおよそ40km続く吹上浜。日置市の海岸で開かれたのは、ファッションショー【ゴミコレ吹上浜】です。衣装に使われている材料はすべて、吹上浜に漂着したゴミです。
プロデューサー・アーティスト カズヒロハカタさん
「いい感じにこう削られて、丸みがあったりするんですよ。新品のプラスチックにはない魅力があるので、すごく面白いなと。(漂着ごみは)素材として僕の中では貴重なものですね。」
ごみコレのプロデューサーで、ドレスを制作したアーティストのカズヒロハカタさん。日置市吹上町を拠点に活動し、5年前から漂着ごみを使った服作りを始めました。
漂着ごみの魅力を伝えたいと開いたゴミコレは、今年で4回目です。
カズヒロハカタさん
「『漂着ごみを使っておもしろいものができそう』っていうワクワクを、いろいろな人と共有したいなと。」
午前10時。ゴミコレは、ステージとなる浜のゴミ拾いから始まります。
県内で回収されるプラスチックなどの漂着ごみは、全国で6番目に多い年間1700トン。ポイ捨てされたものや、海外から流れ着いたものなどで、環境汚染や生態系への影響が問題となっています。
この日も、海岸ではペットボトルやゴミ袋などが流れ着いていました。
(スタッフ)
「(ごみ拾い)初めてしました。こんなに落ちているとは思わなかったです。」
(モデル)
「ピンクのストローだったり、洗濯バサミ(を拾った)。全部かわいく見えてきますね。このイベントがきっかけで、ハカタさんが言うように素材として考えるようになりました。」
集めたゴミはサークル状に並べ、ステージに見立てました。
(モデル)
「着心地…重いです(笑)。ドレスを見れば、こういうごみが海に流れ着くんだなと、視覚的に訴えられるものになると思う」
いざ迎えた本番。およそ500人の観客が秋の吹上浜に集まりました。
黒いゴミだけを使ったドレスや漁業用の浮きでできたベストなど、ハカタさんが手がけた10着の衣装が、海を背景にダンスを交えながら披露されました。
カズヒロハカタさん
「まずは見た目のインパクトやショー、パフォーマンスを楽しんでいただきたい。どういった海洋ごみが素材として使われているのかなど、海洋ごみからいろいろな情報が見えてくるので。」
(観客)
「本当にかわいかった。」
「ごみだけであんなにきれいに(服に)なるんだって思った。」
「楽しかったですね。ごみであんなに立派なものが出来るなんて。」
「どんどん広げていってもらいたいですね。」
カズヒロハカタさん
「海洋ごみで作ったからという説教臭いことではなくて、海洋ごみが欲しい、必要だから拾うっていうのが、結果的に砂浜の環境美化にもつながるし、そういったもののほうが、SDGs、持続可能な開発目標(だと思う)。」
「僕はそれを『ゆるいSDGs』と呼んでるんですが、そういう流れがいいのかなと思っています。」
ハカタさんの手によって、新たな命が吹き込まれた漂着ごみ。
多くの人の目を楽しませながら、海の現実を伝えます。