鹿児島大学大学院 理工学研究科 上野大輔 准教授
「イカっていうよりウインナーかなと思う。すぐ思ったのは、たこさんウインナー。お弁当の」
鹿児島大学大学院やかごしま水族館などの研究チームがイギリスの学術誌に発表した新種と思われる生き物。
大隅半島の川で「山太郎ガニ」の愛称で親しまれるモクズガニなどに付着して生息する、「ヤマタロウヤドリツノムシ」です。
つぶらな瞳にまるい頭、短く伸びた5本の足は、確かにたこさんウインナーにそっくり。
上野准教授
「非常にかわいい。一緒に研究している人たちもかわいいと言ってみんなメロメロ」
SNSなどで注目される一方で、まだ分からないことも多いヤマタロウヤドリツノムシ。その調査に同行させてもらいました。
向かったのは、垂水市の猿ヶ城渓谷です。
上野准教授
「かなり限られたところにしかいない。特に鹿児島、中でも大隅のほうはかなりの頻度で見られる」
「大隅半島には固有の種類がいっぱいいる豊かな自然がある場所なので、そういう場所だからいるのかなと」
川底に仕掛けた網を引き上げると。
「この部分、オレンジ色のつぶつぶがそれです。」
「多い時には全身についていて100、200匹以上ついていることも」
「これが吸盤です。この吸盤を使ってカニの表面にしっかりとしがみついている」
体長は2~5ミリで、くねくねと体を動かし、カニの表面を這うように移動します。カニの甲羅などに付着した汚れやボウフラなどを食べているそうです。
上野准教授
「口は普段小さいが、その口より何倍も大きいボウフラがお腹の中を見ると丸々入っているので丸呑みしている」
「時々立ち上がって触手を動かしているときがあるが、それでたぶんとらえている」
その独特な動きがこちら。
立ち上がって体を揺らす姿は、まるで踊っているようです。
上野准教授
「動きが可愛らしい。非常に単純なデザインなのに複雑な動きができるのがチャームポイント」
チャームポイントは、ほかにも。
上野准教授
「胃袋の前に黒い点があるが、それが目。つぶらな瞳で可愛い。たこさんウインナーですよね、どうみても」
そして、川には 手長エビも生息していますが、なぜかエビには興味がなく、カニにしかくっつかないそうです。
上野准教授
「(水槽に)カニを入れるとカニにはすごい勢いで寄っていく。でもエビをいれても全く見向きもしない。」
「カニを食べているわけではないのでエビの上でも生きていけるとは思うが、カニが大好きみたいですね」
長年、山太郎ガニ漁をしている有村憲三郎(ありむら・けんざぶろう)さんも、存在に気付いてはいたものの、気に留めてこなかったといいます。
山太郎ガニ漁師 有村憲三郎さん
「報道でたこウインナーの形を見て、俺がとっていた虫と一緒だと思ってびっくりした。」「みんなにもこういうものだと言えるし大発見で良いことだと思う」
水質のきれいなカニにしか付着しないとみられ、水の環境などを評価する指標になるかもしれないヤマタロウヤドリツノムシ。
秋には旬を迎える山太郎ガニとともに多くの県民に親しまれ、鹿児島の自然の豊かさを伝える存在になってほしいと、研究チームは願っています。
上野准教授
「山太郎ガニを獲ったらヤマタロウヤドリツノムシもいるんだよとおばあちゃんが子どもや孫に教えるような存在になったらいい」