海岸に漂着したゴミをいつでも誰でも拾うことのできる仕組み「拾い箱」。今年は県本土にも広がりを見せています。
エメラルドグリーンの海、そして白い砂浜。鹿児島県最南端の島、与論島です。この美しい海を求めて、与論島には全国から観光客が訪れます。しかし、この砂浜にも…毎日ゴミが流れ着いています。
地元出身の池田龍介さん(35)は、大学を卒業後、長野県のNPO法人に勤務した後、2014年に与論島にUターンしました。
海のガイドとして観光客を案内する一方、Uターン直後からはじめたのが毎日の海岸のゴミ拾いでした。
「こどもの頃に比べてちょっと汚れているという感覚があった。とりあえず自分にできることをやろうと思い、その時ごみ拾いしか思いつかなかった」
たった一人ではじめた活動でしたが、口コミなどでひろがり、地元の人や観光客も参加する取り組みに。一年目の参加者はのべ3185人。2年目以降も参加者は増えていきましたが、池田さんはある『違和感』を感じるようになります。
「毎日ゴミ拾いをしてたら、よくも悪くも“ごみ拾いの人”とよばれるように。特定の誰かがやることではなく、自分たちの島だし、みんなでちょっとずつきれいにする島、そういう地域がいいと思った。」
そこで池田さんが発案したのが、海の漂着ごみを入れる専用の箱「拾い箱」。
2017年、池田さんは与論町役場と協力し、島内8ヶ所に拾い箱を設置しました。
イベントとしてごみ拾いをするのではなく、海岸に来たついでに「少しゴミを拾う」。いつでも誰でも拾うことのできる環境を作りました。少しずつではありますが、地元の人や、拾い箱を知った観光客が協力してくれるように。
この「拾い箱」プロジェクトは、海洋ゴミの対策に積極的に取り組む優れた団体や企業などを表彰する「海ごみゼロアワード」で去年「アクション部門」で「日本財団賞」に選ばれました。
「1人の100歩よりも100人の1歩。少しずつみんなできれいにする島づくりができればと思う。普通、観光地は人が来るほど汚れるが、その例外。人が来るほどきれいになる砂浜を目指すことは無理ではないと思う。」
与論町で4年前にはじまった取り組みは、鹿児島県本土にも広がりました。鹿児島市や垂水市、南さつま市の海岸にも「拾い箱」が設置されました。
鹿児島市の磯海水浴場に設置された「拾い箱」は、子どもたちの海洋教育のきっかけにもなりました。
ボーイスカウトの関係者が拾い箱を見かけたことがきっかけで、海ごみについて子どもたちが学ぶイベントが開催されたのです。
子どもたちは、鹿児島市の磯海水浴場でゴミ拾いを行ったあと、そのゴミを集めてどんなものが多く流れ着いてきたか学びました。
そして最後は分別をして、「拾い箱」にいれていました。
「県本土に設置されたのはうれしい。与論島だけで発信するメッセージだけだと弱いので、いろんな地域と一緒にメッセージを発信していければ。ごみに関して美意識の高い日本だからこそ発信できる余地がある」
いつでも誰でも、気軽に「海ごみ」を拾うことができる「拾い箱」。与論島ではじまった取り組みが広がりをみせ、鹿児島の海を守っていきます。